Greetings from Lover's Lane
ブルース・スプリングスティーンについて、なにもかも。
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"911/Tribute To The Heroes"~"The Rising"
とあるウィークディの夜、365日の中の、ありふれた一日が終わろうとしていて、日常に忙殺されつつも仕事を終えて、夕食をとり、いつもの通り、テレビをつけたら、なんだか、映画”タワーリングインフェルノ"の再放送をやってるのかと想うぐらい壮絶な場面が映っていた。でも、それは特撮でもなんでもない、正真正銘の厳然たる事実だった。。。その日を境に、暫くの間、全ての報道が一斉に現地情報を流し始め、ネットも真相究明の話題で溢れていた。

事件から数日後に、消火活動に従事し、亡くなった消防士たちと犠牲者を弔うための"Tribute To Heroes"というチャリティ番組が、遅い時間ではあったが、日本でも数時間遅れで放送され、それを実現させるアメリカの音楽業界の行動力と、音楽的な質の高さに圧倒されたのを今でも覚えている。勿論、その中に、ブルースが居た。"My City Of Ruins"という新曲を切々と唄ったのを観た。本当にブルースが伝えたい、と想った事が、素直に、見事に形になっているように想えた。これは、次のアルバムは、まぎれもない、傑作になるかもしれないという、予感がどんどん心の中で大きくなってきていた。



 しかし、レコーディング情報は、"アトランタでレコーディングしている"とか、"ブレンダンオブライエン"がプロデューサーだ”とか、断片的に情報が入って来ていた。ブレンダンオブライエンは、パールジャムをブレイクさせたプロデューサー、というよりは、むしろボブディランが久々に天賦の片鱗をのぞかせた"Unplugged"のバンドで、キーボーディストとして加わっていた印象が強かったが、"いい人選かもしれない"と、期待に拍車がかかった。とはいえ、なかなか吉報はもたらされず、まぁ、いつも通り、長い目で待っていよう、と想った矢先、2002年の夏、待望のアルバム"The Rising"のリリースが発表された。先行で公開されたアートワークと、1st シングル、
"The Rising"のMVをWebで、何度も観ながら発売の日を待った。当時書いたレビューをあえて以下に再録する。

 長年お馴染みのレコーディングスタッフ(ボブクリアマウンテンや、チャックプロトキン)から離れて、久々に加わった、新しい"血"のプロデューサー、ブレンダンオブライエンの的確な手腕が、アルバム制作としては16、7年ぶりのブルースとEStreet Bandのスタジオワークを見事にまとめあげた。
 楽曲のアイデアやアレンジも、"World's Apart"や、"僕の舌に残ったほろ苦い後味"の1フレーズを意識的に浮かび上がらせた"The Fuse"を聴いてもわかるように、かつての"57Channels"や、"Missing"のように歌詞の世界とサウンドが きしみをあげるような唐突な印象がなく、ブルースとブレンダンが曲そのものと、詩の世界が喚起する音を無理なく表現したものが、互いを殺すことなく、おさまるべき場所にきちんとおさまっている。
 "Lonesome Day"は、"Tunnel of love"をくぐり抜けられなかった男の外伝だし、"Into The Fire"は本当に"Tribute to the heroes"で披露されていたら、きっと遺族があまりの情景描写の生々しさに、TVの前で号泣してしまったかも。彼女の中に"みたされぬ心"を置き去りにしたまま逝ってしまった"Hungly heart"の主人公の妻が語る"Waiting On A Sunny Day"。命を落とした男が自分の居ない世界に置き去りにした"想い"と自分がいかにはかない存在だったかをつづる"Nothing Man"。
 暗く、血なまぐさい地に立ち尽くした主人公が未来に希望を託す、"Counting On A Miracle"、アムネスティのツアーと" 92'~93' "ツアーの音楽的影響が結実した、"Worlds' Apart" 。95年"Greatest Hits"のセッションの"Without you"の発展であり、シンプルなリフレインが陳腐に聞こえない普遍的なものを歌詞に込めることに成功している"Let's be friends"。"Empty Sky"もいいが、効果的な ブルースのハープソロが久々に炸裂する、"殺人株式会社"に従事する男の独白の、"Further On (Up The Road)"。
 昔のアウトテイク、"Ricky Wants A Man Of Her Own"の音楽的アイデアを膨らませて、十八番の"Meet me~"のリフレインで、締めた"Mary's Place"。最後の2行で全てを明らかにする"You're Missing"の手腕にはもう、脱帽した。前作、"The Ghost of Tom Joad"の世界を踏襲するかのように、サイモンとガーファンクルの"Sound Of Silence"にオマージュを捧げながらもあまりに悲劇的に黄泉の国へとむかう消防士の別離をうたった"Paradise"アルバムの最後に収録されている、"My City Of Ruins"は、とうとう、自分達の"Drift Away"を書き上げた! とブルースが喜ぶのが眼に浮かぶような仕上がりになっていて、静かにアルバムを締めくくっている。
 アルバムを聴き終わってから改めて、2000年に"Live In NYC"で 発表された"Land of Hope and Dreams"を聴くと、ブルースの音楽に登場する全ての要素がこめられた、音楽を通じた探究の、新たな始まりを告げる曲になっていることに気付かされる。この曲を作り上げた時点でブルースは すでに"旅の終わり"を無意識のうちに見据えていた。つまり 自分が音楽を通じてオーディエンスに与えられるすべてのこと=ライブの場所でしか感じられなかった"熱"をレコードに刻印すること。ここでは、その成果が完璧に鳴り響いている。

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